第19課 女性の晩婚化と少子化現象
高学歴、高収入、高身長を表す「3高」という言葉がはやった時代もありましたが、今や学歴や容姿よりも、家事や育児に協力してくれることが、女性が重視する結婚相手の条件となっています。そして調査の度に、家事育児の共同負担、女性が仕事を続けることへの理解が上昇しているのです。
この傾向は、「結婚に不利益を感じる理由」に関する調査でも同様の結果が出ています。最も男女の違いが目立つ項目についてみると、男性では「自由に使えるお金が減ってしまう」が第一位を占めるのに対して、女性では「家事、育児負担の増加」(1位)、「仕事がしにくくなる」(3位)が断然男性より高いのが特徴です。
現在の日本における少子化の原因のひとつに、女性の晩婚化・未婚化があげられます。しかし、女性たちが結婚したくないのかといえば、そうではなく、結婚相手に対する条件が折り合わず、適当な相手に巡り会えないというのが大半ではないかと思われます。「結婚したくないことはないが、自分のライフ・スタイルを犠牲にしてまで結婚したいとは思わない。適当な人に会えたら結婚するし、会えなかったら独身でもいい。」という女性が増えているのです。彼女たちは結婚相手に3C(Comfortable=十分な給料、Communicative=価値観とライフ・スタイルが共通、Cooperative=家事への協力)を求めます。一方、男性は女性に対して、4K(かわいい、家庭的、賢い、軽い=体重)という家庭的な女性のイメージを求めますから、うまくいくわけがないのです。実際に家事労働の時間は専業主婦が7時間23分、有職女性が3時間29分なのに対して、有職男性は31分に過ぎません。男性の66%、女性の77.7%が「男性はもっと家事に関わるべき」(東京女性白書'97 )と考えているにもかかわらず、このような結果になるのは、会社での長時間労働や業績競争でへとへとになっていて、家に帰って家事どころではないというのが率直なところではないでしょうか。
具体的な数字を見てみると、女性の平均初婚年令はこの10年で25.3才から26.1才、大卒以上の女性は27.4才に上昇し、全体的に晩婚化が進んでいます。晩婚化につれて第一子の出産平均年齢が27歳を越えています。昔は30歳を超えると高齢出産と言われたものですが、今は42歳ぐらいにならないと言われません。しかも教育費が高いですから、子供をつくっても1人が限度、それ以上つくらないし、つくれないというのが現実でしょう。また、日本では、婚外子は1%に過ぎませんが、スウェーデン、デンマークは5割、イギリス、フランスは3割強と、子どもをつくる環境の違いも少子化の原 因のひとつでしょう。日本政府は、1985年に「男女雇用機会均等法」、1995年に「育児・介護休業法」、1999年に「男女共同参画社会形成の促進に関する基本法」を成立させ、対策に取り組んでいますが、今のところめぼしい成果は現れていません。
しかし、少子化は本当に悪いことなのでしょうか。政府は少子化がこれ以上進むと、介護労働力の確保の問題や、年金・福祉・医療の給付の増加による福祉財源の問題、生産人口の減少によって日本社会の活力が失われ、ますます不況になると心配しているのですが、人口が減ることで、ごみ、住宅問題、通勤ラッシュなどが解消され、かえって住みやすい日本になる可能性だってないわけではありません。