在庫転送
【SAP】在庫転送について徹底解説!
在庫転送では、プラント・保管場所間で在庫の移動処理ができます。
在庫転送と一口に言っても、SAPでは9つの在庫転送パターンが用意されています。
この記事ではSAPの在庫転送のパターンと在庫転送パターンごとの用途・プロセスについて解説していきます。
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在庫転送パターン
1Step在庫転送・2Step在庫転送
在庫転送のパターンは大きく2つに分かれます。
- 1Step在庫転送
- 2Step在庫転送
それぞれ業務イメージ・データイメージを図にすると、このようになります。
1Step在庫転送は、処理ボタンを押すとプラント1000 からプラント2000 へ在庫データが移ります。
2Step在庫転送は、その名のとおり、出庫(1step目)と入庫(2step目)の処理が必要です。 出庫処理をすると在庫タイプが「積送中在庫」になることが特徴です。
在庫転送オーダー
続いて、在庫転送オーダーについて解説していきます。
在庫転送オーダーとは、この品目・数量・ロットを ここから ここへ 在庫転送お願いしますね! というオーダー伝票のことです。
業務をイメージすると、在庫転送オーダーが必要か不要かが分かってきます。
まず在庫転送をする起点は「転送元」です。
ただ、在庫が欲しいのは「転送先」ですよね。(テレパシーでもない限り、転送元からは 転送先がいつ・どの品目・数量を どのプラント/保管場所へ欲しいのか分からないですよね。)
そんなときに、「転送先」が「転送元」へ この品目・数量・ロットを このプラント/保管場所へ 在庫転送お願いしますね! と依頼するときに使います。
またSAPの在庫転送オーダーは、転送先から転送元への「発注」という扱いになります。
そのため購買発注伝票を登録する手順と同じで、「伝票タイプ」を通常の購買発注と在庫転送オーダーを使い分けます。
在庫転送パターンまとめ
在庫転送1step/2step、在庫転送オーダーあり/なし、出荷指示あり/なし、請求あり/なし を整理すると、9パターンに分けられます。
それではパターンごとに処理内容・用途について解説していきます。
1.1stepプラント間転送 / 2.1step保管場所間転送
1Stepプラント間転送・保管場所間転送では、在庫転送オーダーを使わず、いきなり在庫のプラント・保管場所を変える処理です。
そのため転送元・転送先のコミニケションをオフラインで実施し、データ上はいきなり在庫を振り替えてもOKの場合に使用します。
3.2stepプラント間転送 / 4.2step保管場所間転送
2Stepプラント間転送・保管場所間転送では、在庫転送オーダーを使わず、転送元で出庫・転送先で入庫し、在庫のプラント・保管場所を変える処理です。
1Step在庫転送と異なり、「転送中在庫」をとらえることができます。(在庫転送オーダーなしの2step在庫転送の場合は「積送中在庫」ではなく、「転送中在庫」という名称で在庫が扱われます。)
そのため転送元・転送先のコミュニケーションをオフラインで実施し、転送元で出庫、そして転送元が出庫した品目・数量・ロットに対して転送先が入庫をしなければなりません。
(私の経験上、転送先がオフラインコミュニケーションを基にに品目・数量・ロットに対して入庫処理をする必要があるため、これを業務で使うケースは今までなかったです。)
5.2stepプラント間転送(在庫転送オーダーあり)
2stepプラント間転送(在庫転送オーダーあり)では、在庫転送オーダーを使って、転送元で出庫・転送先で入庫し、在庫のプラント・保管場所を変える処理です。
在庫転送オーダーなしのパターンと異なり、転送元・転送先で在庫転送オーダーを基にコミュニケーションが取れるため、在庫転送に必要な在庫を正確に把握することができます。
ただし、出庫のための出荷指示がないパターンのため、構内物流(プラント内在庫転送)によく使われます。
※もちろんプラント間でも出荷指示なしで出庫処理をする業務をしているところは、このパターンを使用します。
6/7.プラント間転送(在庫転送オーダーあり)(出荷指示あり)
2stepプラント間転送(在庫転送オーダーあり)(出荷指示あり)では、在庫転送オーダーをもとに出荷指示を登録し、出荷指示をもとに転送元で出庫・転送先で入庫し、在庫のプラント・保管場所を変える処理です。
出荷指示なしのパターンと比較し、転送元で出庫する際に出荷指示を必要とする場合に使用します。
1つ事例を紹介すると、生産プラントで製造した最終製品を外部物流倉庫プラントへいったん送付するために、最終製品に対して出荷指示をかけ、出庫していく場合に使用します。
8/9.プラント間転送(在庫転送オーダーあり)(出荷指示 / 請求あり)
2stepプラント間転送(在庫転送オーダーあり)(出荷指示 / 請求あり)では、在庫転送オーダーをもとに出荷指示を登録し、出荷指示をもとに転送元で出庫・転送先で入庫。そして在庫転送した品目に対して請求処理をするパターンです。
これは会社コード間で在庫転送をする場合に、よく使用されます。
例えば、同じSAPに日本本社と中国子会社 が入っている場合、中国子会社からの在庫転送オーダーに対し、日本本社が出荷指示→出庫、そして中国子会社で入庫。 その後、在庫転送オーダーを元に日本本社から中国子会社に請求をたてる場合に使用します。
在庫転送プロセスフロー
それでは在庫転送パターンごとのプロセスフローについて説明していきます。
1.1stepプラント間転送 / 2.1step保管場所間転送
オフラインコミュニケーションをする・しないはクライアントに寄りですが、1Step在庫転送はT-code:MIGOで1回処理するのみです。
3.2stepプラント間転送 / 4.2step保管場所間転送
オフラインコミュニケーションをする・しないはクライアントに寄りですが、転送元で在庫転送出庫(T-code:MIGO)、その後転送中在庫になっている在庫に対して転送先で在庫転送入庫(T-code:MIGO)を実施します。
5.2stepプラント間転送(在庫転送オーダーあり)
2Step在庫転送(在庫転送オーダーあり)では、転送先が在庫転送オーダーを登録(T-code:ME21N)。このとき、発注伝票登録画面にて「伝票タイプ:UB(在庫転送オーダー)」を選択します。
その後、在庫転送オーダー参照で、転送元で在庫転送出庫・転送先で在庫転送入庫(T-code:MIGO)をします。
6/7.プラント間転送(在庫転送オーダーあり)(出荷指示あり)
2Step在庫転送(在庫転送オーダーあり)(出荷指示あり)では、転送先が在庫転送オーダーを登録(T-code:ME21N)。このとき、発注伝票登録画面にて「伝票タイプ:UB(在庫転送オーダー)」を選択します。
転送元で在庫転送オーダー参照の出荷指示を登録(T-code:VL10B)し、出荷指示伝票から出庫確認をすることで在庫転送出庫をします。(T-code:VL02N)
(※1Step在庫転送の場合は、出庫時点で在庫が転送先の在庫となります。)
そして、転送先で在庫転送入庫(T-code:MIGO)をします。
8/9.プラント間転送(在庫転送オーダーあり)(出荷指示 / 請求あり)
2Step在庫転送(在庫転送オーダーあり)(出荷指示 / 請求あり)では、転送先が在庫転送オーダーを登録(T-code:ME21N)。このとき、発注伝票登録画面にて「伝票タイプ:UB(在庫転送オーダー)」を選択します。
転送元で在庫転送オーダー参照の出荷指示を登録(T-code:VL10B)し、出荷指示伝票から出庫確認をすることで在庫転送出庫をします。(T-code:VL02N)
(※1Step在庫転送の場合は、出庫時点で在庫が転送先の在庫となります。)
そして、転送先で在庫転送入庫(T-code:MIGO)をします。
入庫処理後、転送元で請求処理(T-code:VF01)および転送先で請求書照合処理(T-code:MIRO)を実施し、お互いに売掛金・買掛金を計上します。
サマリ
ここまでで在庫転送のパターンおよびプロセスについて解説してきました。
それぞれ用途が異なるので、用途に使い分けるのがベターです。
在庫転送パターンを理解し、実際のクライアントの業務と照らし合わせて、業務プロセス設計をしていく手助けとなれば幸いです。