Windows PowerShell 入門(7)-関数編2
この連載では、Microsoftが提供している新しいシェル、Windows Power Shellの使い方を解説します。前回に引き続きPowerShellにおける関数の取り扱いとして、変数と関数のスコープ、プロファイルの登録、パイプライン処理などについて取り上げます。
はじめに
この連載では、Microsoftが提供している新しいシェル「Windows Power Shell」の使い方を解説します。今回は、関数をファイルに作成する方法、関数のプロファイルへの登録方法、パイプライン引数、begin/process/endについて説明します。
対象読者
- Windows PowerShellでコマンドレット操作ができる方
- 何らかのプログラミング経験があればなお良い
必要環境
- Windows PowerShell
関数をファイルに作成する
PowerShellの関数をファイルに作成するには、テキストエディタがあれば十分です。
まずは、テキストエディタを開いて下記のように入力し、「MyFunction.ps1」として保存してください(説明の都合上、「C:\Work」に保存するものとします)。
function funcA { Write-Host "funcAです" }
では、この「MyFunction.ps1」にあるfuncA
を実行するにはどうしたらよいでしょうか?
1つの方法としては、この「MyFunction.ps1」に下記のように1行追加すると関数funcA
を呼び出すことになります。
function funcA { Write-Host "funcAです" } funcA #この行を追加することでfuncAを呼び出す
この「MyFunction.ps1」は function funcA { ~ }
までが関数の定義で、ファイルにこの部分が書かれているだけでは実行されません。関数を実行するには、最後に追加した行のように、関数を呼び出す必要があります。
「MyFunction.ps1」はfuncA
を呼び出すように1行追加したので、下記のようにすれば、funcA
が実行されることとなります(PowerShell入門(3) スクリプト編の「スクリプトファイルの実行とセキュリティ」を参照ください)。
PS C:\Work> ./MyFunction.ps1 funcAです
では、この関数をコマンドラインから、コマンドレットであるかのように関数名を指定するだけで呼び出すにはどうしたら良いでしょうか?
「C:\Work」の下に「MyFunction.ps1」がある状態で、関数名を記述して[Enter]を押すと、
PS C:\Work> funcA 用語 'funcA' は、コマンドレット、関数、操作可能なプログラム、またはスクリプト ファイルと して認識されません。用語を確認し、再試行してください。 発生場所 行:1 文字:5 + funcA <<<<
のようにエラーが表示され実行することができません。関数名を記述するだけではだめなようです。
では、いったいどのようにすればよいでしょうか?
実は、コマンドラインから直接関数を呼び出すには、関数名の先頭にglobal修飾子が必要です。「MyFunction.ps1」を下記のように修正してください。
function global:funcA { Write-Host "funcAです" }
そして関数を使用するために、下記のようにしてPowerShellに関数を登録します。
PS C:\Work> ./MyFunction.ps1 PS C:\Work>
これで準備はOKです。後は下記のように、コマンドラインで関数名を記述すれば実行されます。
PS C:\Work> funcA funcAです
このようにして登録を行った関数はGet-ChildItem
コマンドレットで確認することができます。
PS C:\Work> Get-ChildItem function: CommandType Name Definition ----------- ---- ---------- Function prompt 'PS ' + $(Get-Location) + $(if ($... Function Clear-Host $spaceType = [System.Management.A... : :長いので省略 : Function funcA Write-Host "funcAです"...
実は、この方法で登録した関数はPowerShellを終了すると無効になってしまいます。ということで、次はこの問題を解決する方法について説明したいと思います。
関数をプロファイルに登録する
PowerShellコンソール上で直接入力して作成した関数は、PowerShellコンソールを閉じてしまうと利用できなくなります。この問題は、関数をプロファイルに登録することで解決することができます。
まずは、プロファイルについて説明します。プロファイルはPowerShell起動時に1度だけ読み込まれる特別なスクリプトファイルです。このファイルは、あらかじめパスが決まっており、$Profile
という自動変数に格納されています。
試しにコマンドラインで$Profile
を確認してみましょう(表示されるパスはお使いの環境によって異なります)。
PS > $Profile C:\Users\HIRO\Documents\WindowsPowerShell\Microsoft.PowerShell_profile.ps1
コマンドラインで下記のように入力し、メモ帳でプロファイルを開いてみましょう。
PS > Notepad $Profile
後は、下記のように入力して、先ほど確認したパス(ここでは「C:\Users\HIRO\Documents\WindowsPowerShell\Microsoft.PowerShell_profile.ps1」)に保存します。
function funcA { Write-Host "funcAです" }
保存が終わったら、PowerShellを再起動し、funcA
を実行してみましょう。
PS > funcA funcAです
このように、プロファイルに関数を記述すると、毎回PowerShellに関数を手動で登録する必要がなくなります(スクリプトの実行にはセキュリティ設定が必要ですので、動作しない場合は「関連記事 Windows PowerShell 入門(3)-スクリプト編」を参考に設定してください)。
しかし、多数の関数を「Microsoft.PowerShell_profile.ps1」に記述するのはメンテナンスが大変です。
これを解決する方法としてよこけんさんのサイトの「プロファイル活用」でスマートな方法が紹介されています(よこけんさんの承諾を得て掲載しております。よこけんさん、ありがとうございます)。実は、筆者自身もこの方法を採用していて、関数の管理が容易になります。
ただし、1点だけ注意してもらいたいことがあります。それは、プロファイルに記述する関数はスコープを指定しなくても問題ありませんが、ファイルに記述する関数はglobal
スコープが必要であるということです。
先ほどのfuncA
を「MyFunction.ps1」というファイルにグローバルスコープを付けて保存する場合は、
function global:funcA { Write-Host "funcAです" }
とします。
パイプライン引数
PowerShellでの関数は、パイプラインからの値を受け取ることが可能です。パイプラインからの渡された値は$input
という自動変数に格納されます。
まずは、コンソールで下記の通り入力し、pipe-func1
という関数をPowerShellに登録しましょう。
PS > function pipe-func1 >> { >> foreach ($a in $input) >> { >> Write-Host $a >> } >> } >>
この関数は、パイプラインで受け取った値をforeach
で1つずつ取り出し表示するという単純な関数です。
次のようにして、この関数を実験してみてください。
PS > 1..10 | pipe-func1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
1..10
というのは、1から10までを表します(Windows PowerShell 入門(4)-変数と演算子の範囲演算子を参照ください)。結果としてこの関数は、$input
に1から10までの数値を受け取り、その値を表示します。
もう1つ実験してみましょう。
PS > "apple","banana","orange" | pipe-func1 apple banana orange
こちらは"apple"
,"banana"
,"orange"
という3つの値が$input
に渡され、結果その値を表示します。
begin, process, end
PowerShellでは、パイプラインで受け取った値を処理する方法にbegin
/process
/end
というものが存在します。まずは、下記スクリプトを入力してください。
PS > function f >> { >> begin { $local:cnt = 1 } >> process { ("$local:cnt:$_"); $local:cnt += 1 } >> end { $local:cnt } >> } >>
このスクリプトには、begin
/process
/end
がありますが、パイプラインから値を受け取ると
begin {最初の1回だけ実行}
process {パイプラインで受け取った値ごとに実行}
end {最後に1回だけ実行}
という動作をします。
つまり、先ほど入力した関数f
は、
- 最初にローカル変数
cnt
を1で初期化 - パイプラインから受け取った値(
$_
に値が代入されている)を表示し、ローカル変数をインクリメント - 最後にローカル変数の現在値を表示
ということを行います。
先ほど、パイプライン引数の値は$input
自動変数に入ることを説明しました。process
節でパイプラインの値を取得する場合は$_
自動変数となりますので、使用には注意してください。
実際に、この関数にパイプラインから値を渡してみましょう。
PS > "apple","banana","orange" | f 1:apple 2:banana 3:orange 4
パイプラインからの値を処理する際、前処理と後処理を行いたい場合は、ぜひ使用してみてください。
まとめ
今回は、前回に引き続きPowerShellでの関数の取り扱いを取り上げ、次の内容について解説しました。
- 関数をファイルに作成する
- 関数をプロファイルに登録する
- パイプライン引数
- begin, process, end
次回もPowerShellでの関数の取り扱いについて取り上げると共に、変数のスコープについても説明したいと思います。