Windows PowerShell 入門(6)-関数編1
この連載では、Microsoftが提供している新しいシェル、Windows Power Shellの使い方を解説します。今回は、関数の作成基礎と引数、戻り値、Switchパラメータについて説明します。
はじめに
この連載では、Microsoftが提供している新しいシェル、Windows Power Shellの使い方を解説します。今回は、関数の作成基礎と引数、戻り値、Switchパラメータについて説明します。
対象読者
- Windows PowerShellでコマンドレット操作ができる方
- 何らかのプログラミング経験があればなお良い
必要環境
- Windows PowerShell
関数の基礎
PowerShellでの関数の基本構文は、
function 関数名 { 処理内容 }
です。このようにして作成した関数は、
関数名[Enter]
と入力して呼び出します。
早速ですが関数を1つ作成してみましょう。コンソールウィンドウで下記のように入力してください。
PS > function Hello { >> Write-Host "Hello PowerShell World!!" >> } >>
上記は関数名がHello
で、呼び出されたらWrite-Host
コマンドレットを使用して"Hello PowerShell World!!"と表示するものです。
では実際にHello
関数を使用してみましょう。コマンドラインでHelloと入力し、[Enter]キーを押下してください。
PS > Hello Hello PowerShell World!!
関数が実行され、"Hello PowerShell World!!"と表示されます。
引数
引数のある関数
引数のある関数の構文は、
function 関数名 (引数1, 引数2, ...引数n) { 処理内容 }
またはparam
キーワードを使用して、
function 関数名 { Param(引数1, 引数2, ...引数n) }
と書きます。この連載では前者の方で説明していきます。
引数のある関数の例として、足し算をする関数add
を作成してみましょう。
PS > function add ($x, $y) >> { >> Write-Host ($x + $y) >> } >>
この関数は引数$x
と$y
の2つを持っています。このように複数の引数を持つ関数を実行する場合は、
PS > add 3 5
のようにし、引数に渡す値はスペースで区切ります。
実はこの関数は、
PS > add Code Zine CodeZine
のように引数に文字列を渡すこともできます。これは引数に型が指定されていないためです。また加算演算子+
は文字列の場合は連結を行うため、上記は"CodeZine"と表示されます。
引数の型指定
先ほどの関数add
では、引数の型が指定されていませんでした。今度は、引数に型を指定してみましょう。
PS > function add2 ([int]$x, [int]$y) >> { >> Write-Host ($x + $y) >> } >>
引数に型を指定するには、上記[int]
のように[型]
を引数の前に記述します。ここでは、関数add2
の引数の型を[int]
としました。
この関数に文字列を渡したらどうなるでしょうか?
PS > add2 Code Zine add2 : 値 "Code" を型 "System.Int32" に変換できません。エラー: "入力文字列の形式が正しく ありません。" 発生場所 行:1 文字:5 + add2 <<<< Code Zine
引数に型指定([int]
)を行ったため、文字列は受け取ることができずエラーとなります。
引数の初期値
引数には初期値を与えることが可能です。引数を省略して関数が呼び出された場合に、あらかじめ与えておいた初期値が使用されます。
初期値を与えるには引数を、
変数 = 値
のように記述します。
下記は引数$favorite
に"CodeZine"を与えています。
PS > function MyFavorite ($favorite="CodeZine") { >> Write-Host ("My favorite is $favorite") >> }
関数名のみで呼び出すと、
PS > MyFavorite My favorite is CodeZine
となり、初期値が変数にセットされることが分かります。
先ほどは引数の初期値に定数を与えましたが、式を与えることも可能です。
PS > function Get-Year ([DateTime]$ymd = $(Get-Date)) { >> Write-Host $ymd.Year >> } >>
上記の関数Get-Year
は受け取った引数(年月日)の年のみを表示する関数です。引数が省略された場合は、Get-Date
コマンドレットの結果(実行したときの年月日)が$ymd
の初期値となります。
暗黙の引数
ここまでの引数の例は、どのような値をいくつ受け取るかを事前に指定しています。
PowerShellには$args
という自動変数があり、明示的に引数を指定していない関数でも値を受け取ることができます。例として引数のない関数Hello2
を作成して$args
の動作を確認したいと思います。
PS > function Hello2 { >> Write-Host ("こんにちは" + $args + "さん") >> } >>
入力が完了したら次のように実行してみましょう。
PS > Hello2 CodeZine こんにちはCodeZineさん
このように明示的な引数がなくても値を受け取ることができます。
また、$args
変数は複数の値を受け取ることができます。関数へ複数の値を渡す場合は、値をスペースで区切ります。
PS > function Test-Args { >> foreach ( $val in $args ) >> { >> Write-Host $val >> } >> } >>
上記は受け取った引数すべてを表示するというものです。
試しに
PS > Test-Args "A" "B" "C"
と入力してみてください。
PS > Test-Args "A" "B" "C" A B C
となり、3つの値を$args
変数が受け取っていることを確認できます。
$Args
以外にも多くの自動変数があります。興味のある方はコマンドラインでhelp about_automatic_variables | more
参照渡し
参照渡しをするには、引数の前に[ref]
を付けます。
また、関数内部では参照渡しで受け取った値は、
$変数名.value
として使用する必要があります。
下記は、参照渡しのの引数$x
と値渡しの引数$y
を持つ関数です。この関数は、内部で受け取った引数の値を数値の5で上書きするというものです。
PS > function Test-Ref([ref]$x, $y) >> { >> $x.value = 5 >> $y = 5 >> } >>
この関数を実行したらどうなるか実験してみましょう。
まず、変数$x
と$y
を準備し、初期値として1を代入しておきます。次に、関数Test-Ref
を実行するのですが、参照渡しの引数の書き方に注意が必要です。([ref]変数名)
のように記述する必要があります。
PS > $x = 1 PS > $y = 1 PS > Test-Ref ([ref]$x) $y
では、この関数の実行結果はどうなったかを確認します。
PS > $x, $y PS > 5 PS > 1
参照渡しである$x
は"5"に書き換わり、$y
は関数実行前の値"1"が格納されています。
戻り値
戻り値を設定するにはreturn
キーワードを使用します。
下記は、引数で受け取った2つの値を足し算してreturn
で返します。
PS > function Add3 ([int]$x, [int]$y) >> { >> return $x + $y >> } >>
return
で返される値は、下記のようにして変数に代入することができます。
PS > $ret = Add3 3 4
この場合は$ret
に3 + 4の結果が代入されます。
引数の位置指定
関数呼び出し時に引数名を指定すると、引数の順番を変更することができます。
下記はBMIを計算する関数です。
PS > function BMI($weight, $height) { >> return $weight / [math]::pow($height,2) >> } >>
関数の呼び出しを、
PS> BMI 65 1.75
とした場合は、体重が65kg、身長が1.75mのBMIを求めることになり、結果として21.2244897959184という値が返されます。
これを
PS > BMI -height 1.75 -weight 65
として実行しても同じ結果が返されます。これは、関数呼び出し時に、引数height
には1.75、weight
には65を渡すことを明示的に指定しているからです。
このようにPowerShellでは、どの引数に何の値を渡すかを指定することで、引数の順番を変更することが可能です。
BMIは 体重(kg)÷(身長(m)*身長(m)) で求めることができます。
ちなみにBMI 25以上が肥満、22が標準、18以下がやせ です
switchパラメータ
switch
パラメータとは、その名の通りスイッチのような役割をする引数です。
PS > function Say-Hello ([switch]$help) >> { >> if ( $help ) >> { >> Write-Host "これはSay-Hello関数の説明です" >> } >> else >> { >> Write-Host "Hello!!" >> } >> }
この関数を、
PS > Say-Hello -help
として呼び出すと、「これはSay-Hello関数の説明です」と表示されます。これは、関数Say-Hello
にスイッチ-help
を指定すると、$help
にTrueの値がセットされるためです。
このようにswitch
パラメータは、引数に値を渡さずに、パラメータの指定によって処理内容を分岐させたいときに有効です。
まとめ
今回は、次の内容について解説しました。
- 関数の基礎
- 引数の使い方
- 戻り値
switch
パラメータ
今回の説明ではコンソールウィンドウで関数を作成しました。次回は関数をファイルとして作成し、利用する方法について解説したいと思います。