幽灵谷

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第16課かつて日本は公害列島と言われた

Posted on 2010-04-08 17:08  zhb6022  阅读(307)  评论(0编辑  收藏  举报

(だい)16() かつて日本(にほん)公害列島(こうがいれっとう)()われた

15(ねん)ぶりに上海(しゃんはい)(おとず)れた(わたし)は、その()わりように()見張(みは)った。高層(こうそう)ビルの(はやし)高架(こうか)高速道路(こうそくどうろ)、そして(くるま)洪水(こうずい)。しかし、()わらぬものもあった。相変(あいか)わらず信号(しんごう)にお(かま)いなしに(みち)(わた)人々(ひとびと)()れだ。それにしても()()すようにチクチク(いた)い。(のど)(いた)む。()れにもかかわらず(とお)くのビル(びる)(かす)んで()える。これは大気汚染(たいきおせん)のせいだろうか。

 この()(のど)(いた)みには記憶(きおく)がある。70年代(ねんだい)はじめのころの東京(とうきょう)がそうだった。あの(ころ)は、光化学(ひかりかがく)スモッグ警報(けいほう)()(たび)に、校庭(こうてい)子供(こども)たちが教室(きょうしつ)()()んだものである。上海(しゃんはい)のような事態(じたい)は、途上国(とじょうこく)公害問題(こうがいもんだい)として地球環境問題(ちきゅうかんきょうもんだい)(ひと)つにも()()げられているが、日本公害列島(にほんこうがいれっとう)()われたころの日本(にほん)もそうだった。大気汚染(たいきおせん)水質汚濁(すいしつおだく)、ゴミ問題(もんだい)地盤沈下(じばんちんか)騒音(そうおん)(・・・)まったく(いま)上海(しゃんはい)()わりがない。残念(ざんねん)でならないのは、どうして中国(ちゅうごく)日本(にほん)(てつ)()むようなことをするのかということだった。

 日本(にほん)には(にが)経験(けいけん)がある。高度経済成長(こうどけいざいせいちょう)各地(かくち)重化学工業地帯(じゅうかがくこうぎょうちたい)誕生(たんじょう)させたが、工場(こうじょう)からの排水(はいすい)煤煙(すすけむり)は、周辺地域(しゅうへんちいき)空気(くうき)(みず)重金属(じゅうきんぞく)化学物質(かがくぶっしつ)汚染(おせん)した。その代表例(だいひょうれい)水俣病(みなまたびょう)である。熊本県水俣(くまもとけんみなまた)のチッソ水俣工場(みなまたこうじょう)の工場排水に(ふく)まれた有機水銀(ゆうきすいぎん)有明海(ありあけかい)水俣湾(みなまたわん)を汚染し、その(うお)()べた水俣(みなまた)漁民(ぎょみん)たちの(からだ)(むしば)んだのである。愛知県(あいちけん)の四日市では、工業地帯(こうぎょうちたい)から()煤煙(すすけむ)による空気汚染(くうきおせん)で「四日市喘息(よっかいちぜんそく)」と()ばれる呼吸器障害(こきゅうきしょうがい)()こり、(おお)くの子供達(こどもたち)(くる)しんだ。新潟県(にいがたけん)安中市(あんなかし)では、昭和電工安中工場(しょうわでんこうあんなかこうじょう)排水(はいすい)よる新潟水俣病(にいがたみなまたびょう)発生(はっせい)した。富山県(とやまけん)でも神通川(じんづうがわ)神岡鉱業所(かみおかこうぎょうじょ)のカドミニューム汚染(おせん)によるイタイイタイ(びょう)発生(はっせい)した。これら(よっ)つの地域(ちいき)公害患者(こうがいかんじゃ)住民(じゅうみん)たちが()こした行政訴訟(ぎょうせいそしょう)は4大公害裁判(だいこうがいさいばん)()ばれるが、それ以外(いがい)にも全国各地(ぜんこくかくち)患者(かんじゃ)たちの裁判闘争(さいばんとうそう)展開(てんかい)された。そして、これらの反公害闘争(はんこうがいとうそう)こそが、1967(ねん)に「公害対策基本法(こうがいたいさくきほんほう)」を成立(せいりつ)させ、1971(ねん)環境庁(かんきょうちょう)設置(せっち)させる原動力(げんどうりょく)となったのである。しかし、訴訟(そしょう)は、数年(すうねん)(およ)ぶものとなり、原告側(げんこくがわ)勝訴(しょうそ)したときには、すでに(おお)くの患者(かんじゃ)たちが()くなっていたのである。企業(きぎょう)責任(せきにん)(みと)めて謝罪(しゃざい)し、賠償金(ばいしょうきん)支払(しはら)いにも(おう)じた。しかし、いくら賠償金(ばいしょうきん)をもらっても、(うしな)われた健康(けんこう)(いのち)(もど)ってくるはずがない。原告(げんこく)母親(ははおや)()んだ子供(こども)遺影(いえい)()いて、「(めい)(かえ)せ」と企業(きぎょう)()()っている姿(すがた)が、(いま)()()きついている。

 こうして(おお)くの公害患者(こうがいかんじゃ)(とうと)犠牲(ぎせい)(うえ)確立(かくりつ)されたのが、以下(いか)のような公害防止(こうがいぼうし)のための四原則(よんげんそく)だった。

? 汚染者負担(おせんしゃふたん)環境(かんきょう)汚染(おせん)したものが責任(せきにん)をとり、汚染(おせん)除去(じょきょ)必要(ひつよう)費用(ひよう)(すべ)てを負担(ふたん)する。
? 無過失責任制(むかしつせきにんせい)企業(きぎょう)故意(こい)過失(かしつ)がなくても、損害(そんがい)(たい)しては賠償責任(ばいしょうせきにん)()う。
? 総量規制(そうりょうきせい)従来(じゅうらい)濃度規制(のうどきせい)では、生産規模(せいさんきぼ)拡大(かくだい)したときは排出量(はいしゅつりょう)()える。そのため有害物質(ゆうがいぶっしつ)総量(そうりょう)規制(きせい)する。
? 環境(かんきょう)アセスメント(環境影響評価(かんきょうえいきょうひょうか)):開発(かいはつ)による環境(かんきょう)への影響(えいきょう)調査(ちょうさ)予測(よそく)評価(ひょうか)し、公表(こうひょう)することを義務(ぎむ)づける。

 (わたし)(いま)自問(じもん)する。かけがえのない自然環境(しぜんかんきょう)(こわ)してまで、(わたし)たちが()()れたがる「(ゆた)かさ」とは、いったいなんだろうか、と。(いま)(わたし)()東京(とうきょう)(そら)にも(ほし)()え、東京湾(とうきょうわん)にも(かわ)にも(うお)(もど)りつつあるが、(わたし)はタクシーに()って浦東空港(ぷーとんくうこう)()かいながら、そんな(おも)いにふけっていた。それにしてもなんという渋滞(じゅうたい)だろう。(わたし)(おも)わずつぶやいた。「これは道路(どうろ)じゃない。細長(ほそなが)駐車場(ちゅうしゃじょう)じゃないか。」と。